農学博士 児玉不二雄のWeb講座 植物の病気の話

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更新日:2009.07.15(水)

第3話 小麦の眼紋病(ガンモン・ビョウ)

小麦畑に行ってみてください。穂が色づいてきています。収穫が間近になっているのです。でも小麦がすっかり倒れてしまっている畑があります。農家の人は「倒伏(トウフク)」と呼び、とても心配します。どうしたのでしょうか。眼紋病が発生しているのです。

▲小麦が「倒伏」しています。
6月30日の写真です。
▲7月8日の写真です。

《 病徴 》
 小麦の種は9月に播かれます。翌年の5月中~下旬になると茎の付け根に近いところに、紡錘状で眼の形をした典型的な病斑ができます。この形が「眼」に似ているので、眼紋病と名付けられました。6月中旬、穂が出る頃には、病斑は地際の茎の基部全体に拡がり、茎の周囲をとりまきます。茎の中には病原菌のカビが繁殖しするので、小麦は折れて倒伏するのです。

▲「眼」の形をした病斑。
英語ではeye spot(アイ・スポット)です。
▲こうしてみると確かにアイシャドウ入りの
眼ですね。

《 伝染経路と発病条件 》
 罹病した茎(罹病茎;リビョウ・ケイ)は土中に残り、作業機械などに付着して病気の出ていない畑に移動し、小麦に感染します。罹病茎の中にいる病原菌は長期間生存し、秋および春期に胞子を大量につくり、急激にまん延します。連作すると病原菌の密度が高まりので、発生が多くなります。春期が低温に推移すると多発しやすく、病原菌は多湿を好むので、排水不良地で発生が多なります。

《 病原菌のこと 》
 病気の原因となる微生物を「病原体」といいます。植物ではカビが病原体の8割を占めます。カビは胞子をつくります。胞子には様々な種類がありますが、病気の感染・まん延に、大きな役割を果たします。古語で「菌(きん)」は、キノコを指しました。カビも他の生き物と同じように立派な名前をもっています。眼紋病菌はPsudocercosporella herpotrichoides(シュードサーコスポーラ・ハーポトリコイデス)。舌をかみそうなのは、ラテン語(古代ローマ語)のせいです。ただし、研究者の間では、世界中何処に行っても通じます。

▲シャーレの中で純粋培養した眼紋病菌。シャーレの直径は、9cmです。 ▲眼紋病菌の胞子(顕微鏡写真);長さは1mmの1/15~1/20です

今回のキーワード:胞子、罹病茎、ラテン語
(写真提供:角野氏原図、著者原図)
※前回予告の「黒あざ病」は、次回にします。