農学博士 児玉不二雄のWeb講座 植物の病気の話

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更新日:2010.03.31(水)

第6話 アスパラガスの斑点病(ハンテン・ビョウ)

私たち人間は、食用としてダイコンの根を食べます。リンゴは果実、そしてアスパラガスの食用部分は若茎です。ワカグキと読みます。「グ」は、鼻濁音で綺麗に発音しましょう。
春に草木が芽吹くと葉を広げます。アスパラガスでは若茎が顔を出して成長が始まるのです。アスパラガスは、一度植え付けると、毎年若茎を収穫することができる永年生の作物です。でも斑点病にかかると、若茎の収量がどんどん減ります。なぜでしょうか?(写真(1))。
▲(1)若茎です。先端が開いてできる葉は「擬葉」、茎に付いている三角形が「真葉」です。

《 病 徴 》
すでに若茎に病斑ができています(写真(2))。食用の難を逃れた若茎は葉を広げてゆきます。太い茎や葉が繁り背丈が2メートル以上にもなります。その葉や茎などに円形、楕円~紡錘形、大きさ2~6×3~12mmの病斑を生じます(写真(3),(4))。
病斑が拡大して茎、枝、葉(擬葉)をとり囲むと、その上方の部分は枯れてしまいます。発病の著しい畑では、秋の早い時期に全面が黄色くなってみえ、カラマツの秋の姿に似ているので「落葉病(ラクヨウ・ビョウ)」と呼ばれたこともあります(写真(5))。

▲(2)上;擬葉、下;病斑があります。 ▲(3)完成した病斑です。茎を枯らします。

▲(4)水浸状病斑です;このサイトの第1回参照。 ▲(5)落葉症状です。葉が散るとカラマツのようです。

《 若茎の収量が減るのはなぜ? 》
さて、若茎が葉を広げ成長すると地下部に養分を蓄えます。鱗芽群(リンガグン)です(写真(6))。これが大きいほど、翌年の収量が豊かです。斑点病にかかると十分な養分が蓄えられないのです。

▲(6)地下にある鱗芽群;若茎はここから芽をだします。
E-1だけが健全株で、その他は病株です。
 
《 病気を蔓延させる分生子 》

今回の病原菌もカビですが、ちょっとマニアックです。二つの姿を持っています。つまり、母親の遺伝子しか持たない「分生子」と(写真(7))、父母の遺伝子を持つ「子のう胞子」です。
普通、発病は茎葉の繁茂する8月中旬頃から増大しますが、これは分生子の飛散量もこの頃から飛躍的に増えるからです。飛散は、特に、降雨のあった2~3日後に増大します。
分生子は病斑の上で、繰り返しつくられます。そして最後には枯れてしまったアスパラガスの茎葉に潜り込み、翌年の伝染源になります。

▲(7)『分生子』です。大きさは0.02㎜ぐらいです。 

《 子のう胞子の役割 》
雪解けの地面にある枯れ茎の上に黒いものが付いています。この中に子のう胞子が入っています(写真(8),(9))。偽子のう殻(ギ・シノウカク)です。直径が0.4㎜ほどで、外的から子のう胞子を保護しています。この胞子も重要な伝染源で、最初に若茎に感染すると考えられています。子のう胞子は、雌・雄の交配によって生まれるので、このカビの種族の維持に役立っているのです。こちらを完全世代、分生子で増殖する方を不完全世代といいます。植物や動物は完全世代しか持っていませんから、不完全世代はカビの「特権」です。

▲(8)偽子のう殻;枯れ茎にめり込んでいます;『子のう胞子』がつまっています。 ▲(9)『子のう胞子』;8個が一袋、下に2個隠れています。


今回のキーワード:若茎、子のう胞子、不完全世代代
写真:著者原図