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植物の病気の話

第25話 豆類の菌核病

 きれいなキノコの胞子が、病気を蔓延させる作物の病気があります。菌核病がそれです。この病気は、豆類の大敵です。豆の莢の部分に感染して、種子の生育を破壊するのです。つまり豆の収穫ができなくなります。豆類の中では、特にインゲンマメでの発生が目立ちます。ちなみに、北海道ではインゲンマメを、インゲン・菜豆と言ったりしますが、正式名称はインゲンマメです。
 さてその症状はー。

《 病 徴 》

 写真①②③をご覧ください。インゲンマメ、ダイズ、アズキとも共通の症状が見られます。葉・茎・莢のいずれの部分でも、はじめは濃い緑色の病斑を生じ、これが拡大して軟らかく腐ってきます(=軟腐症状といいます)。そしてこの部分に白色綿状のカビ(=菌糸)が生じます。これが病原菌の正体です。
 菌糸に接触した茎や莢は次々と侵され、株全体にまん延します。病状は末期を迎え、白い菌糸の塊は、徐々に黒みを帯び、ついにネズミ糞状の固形物になります。この固形物こそ、菌核です(写真④⑤)。

▲①インゲンマメ菌核病

▲②ダイズ菌核病

▲③アズキ菌核病

▲④茎に付着した菌核

▲⑤純粋培養した病原菌の菌糸(白色綿状)と菌核

《 伝染経路 》

 図1に菌核病の伝染経路を示しました。主役はもちろん菌核です。被害を受けた植物の茎、葉、莢などの内外に形成された菌核は、豆の収穫の時に畑に散乱し、翌年キノコを作ります(写真⑥)。このキノコは子のう盤と呼ばれ、その表面には子のうがビッシリと並んでいます。子のう(子袋)には、8個の胞子が入っており、袋が破れて胞子が飛散します。この胞子によって、病気が蔓延して行くのです。

▲図1 菌核病菌の伝染経路(児玉・山田原図)

▲⑥子のう盤:開いた傘の直径は4~7mm程度

 子のう盤ができるためには、湿度と遮光(=ジメジメした薄暗がり)が必要です。ですから、早くに地表面を覆う作物が栽培された畑ほど、キノコの形成時期も早くなります。牧草地では6月上旬、テンサイおよびバレイショ畑では6月下旬~7月上旬、インゲンマメ畑では7月下旬~8月上旬、アズキ畑では8月中旬に、子のう盤(キノコ)が盛んに作られます。

《 花弁感染・発生しやすい気象 》

 子のう胞子は健全な組織に侵入できず、枯死組織や傷口から侵入します。老化または落下した花弁(=花びら)に胞子が付着して増殖し、感染力を強めて、それらに接触している健全な葉や莢にまん延します。花弁感染という、この病気の感染・発病の主体です。開花後の気象が、日照不足で多湿なときに多発します。一方、乾燥条件下では病勢は停滞します。

《 病原菌と寄主範囲 》

 病原菌は、Sclerotinia sclerotiorum (スクレロティニア・スクレロティオルム)という名前のカビです。ちょっと舌を噛みそうですが10回も唱えると、口になじみます。インゲンマメなどの豆類の他、キュウリ、ジャガイモ、ナス、トマト、その他多数の作物がこの病害に侵されます。

《 防除のポイント 》

 連作すると菌核の密度が高まるので適当な輪作をすること。密植、多肥栽培、窒素質肥料の多用は避けましょう。茎葉への薬剤散布は、豆類の開花期に重点的に行います。

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