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「プランテクト®」ユーザーインタビュー
自身でセンサーシステムを開発する生産者が「プランテクト®」を導入。
元システムエンジニアから見た魅力と今後への期待とは。
「SUNGREEN USER STORIES」では、当社が導入を支援させていただいた製品やサービスが、どのように生産現場で貢献できているのかを生産者にインタビューし、その魅力や導入効果をお伝えしていくことを目指しています。今回は、バイエルクロップサイエンス株式会社のAIを駆使した病害予測モニタリングサービス「プランテクト®」のユーザーである夕張郡栗山町の株式会社自ゆう耕場代表・堀田一司さんにお話を伺いました。
わからないことだらけの農作業、その根拠が欲しかった
株式会社自ゆう耕場は、夕張郡栗山町でピーマン、ミニトマト、バターナッツを栽培する農地所有適格法人です。代表の堀田一司さんは1.95haの圃場に建ち並ぶ15棟のビニールハウスに、さまざまなスマート農業関連ソリューションを導入。現状の栽培方法に満足することなく、より省力的で、データに裏付けられた理想の栽培体系の確立を追い求めています。
堀田さんが就農するための農業研修を受け始めたのは2008年のこと。それ以前は、23年間大手企業でシステムエンジニアとして勤務していた経歴をもちます。2012年に念願かなって農家となり、株式会社自ゆう耕場を設立しますが、農業を始めた頃は多くの苦労があったといいます。「わからないことが沢山あったので、先輩農家さんにアドバイスを求めたこともありましたが、私には肝心な部分がつかめずにいました。ベテランの方にとっては当然の作業でも、それがどういう条件になった時に、何の目的で行われているのか、経験と感覚が備わっていない新規就農者の私には根拠がわからなかったのです。」
このような経験から、自分自身で根拠づけしていくことを決めた堀田さんは、「データがなければ検証することは出来ない」とセンサーシステムを活用して栽培環境のモニタリングを開始。取得したデータを分析し、どんな要因でうまくいったのか、何が良くない結果につながったのかを繰り返し検証しています。
使ってみて実感した「プランテクト3つの利点」
環境モニタリングをスタートさせようと思い立った堀田さんにとって、障壁となったのが導入コストでした。市販されているものを調査するも、なかなか手を出せるものは見つかりません。そこで、堀田さんは自身の経歴を活かし、SE時代から培ってきた知識と人脈によって、安価でありながらも十分な機能をもつセンサーシステムの開発に挑戦することを考えます。「当時販売されていたものは高いものばかり。誰もが導入しやすい価格で、かつメンテナンスも簡単なものが必要だと強く感じました。」と、今では完成したセンサーシステムを自らの圃場で活用するに留まらず、同じ思いをもつ生産者への販売も行っています。
しっかり機能する自作のセンサーシステムがあるなかで、今回プランテクトを導入していただいた理由を、堀田さんは「AI技術による病害予測がどのようなものなのか興味があったのと、自作のセンサーシステムと計測データにどのような違いがでるのかを試してみたかったんですよ。あと、どうやってコンパクトな設計になっているのかもすごく気になっていました。」と言います。
導入後には早速メリットを実感。「子機を増やしても利用料が定額で、かつ料金自体が安い。あと、LoRa通信なので遠距離でも通信が出来るのは良いですね。取り付けがすごく楽なのも魅力だと思っています。」と話す一方で、AI病害予測は予測するために必要なデータ登録に手間がかかる点と10分間隔に行われる通信には課題を感じています。特に通信については「急に日差しが強くなるなど、こちらの対応が必要な状況が発生していても、10分間のタイムラグがあると初動が遅れてしまいます。1~2分間隔にしてもらえるとありがたい。」と今後の改良に期待を寄せていました。
将来の農業のために堀田さんが見据えること
堀田さんにとって目下の目標は、株式会社自ゆう耕場の経営規模拡大です。自作のセンサーシステムに加え、プランテクトや自動潅水機器などを活用しながら、労働力を増やさずに増収の実現を目指しています。そのために、今後はセンサーによって得られるデータだけではなく、ハウスの開閉や潅水のタイミングなどの稼働履歴を全てデータ化したいと話す堀田さん。全ての作業・稼働履歴データと、さまざまな気象データがどのような関連をもっているのかを分析し、その栽培環境に適した理想の制御を行うことで、省力的で高収益な農業を行っていくという構想です。
そして、その先には経験の有無を問わず、誰もが安定して収益をあげられる農業を実現していきたいという夢がありました。「自分と同じように就農後に苦労する方はいると思いますので、そういう方のためにも将来的にはデータを取って、農作業を診断してフィードバックするような取り組みも行ってみたいと考えています。」
技術は進化しても、自然相手の農業において日々変化する環境に最適な対処をするのは容易ではないこと。しかし、そこへ向かって堀田さんは挑戦を続けています。そんな「元SE農家さん」である堀田さんの姿は、さながらソフトウェア開発のために細部まで考え抜いてプログラムの仕様書を作成している最中かのように見えました。
●毎日、スマートフォンを片手に作物と気象データを観察する堀田さん