第2話 タマネギの小菌核病(ショウ・キンカク・ビョウ)
今回は、実際の病気についてわかりやすく解説します。タマネギの小菌核病という病気です。解説の読みほぐしにあたっては、本講座の第1話で紹介した病徴・病斑というキーワード一が役に立ちますので、ぜひ読んでみてください。
《 病徴 》
はじめに葉の先端よりやや下方、あるいは中位の部分に、アズキ粒ぐらいの大きさの白色の斑点ができます。これが次第に拡大して、周辺の不鮮明な縦長の病斑となります。
さらに症状が進むと、葉の上方全体が灰色がかった褐色となり、病気にかかった葉(病葉;ビョウヨウ)はしおれてしまいます。
病斑は、一株のタマネギの下葉の2~3枚目に生じるものが大部分です。しかし、上方の若い葉にも拡がることがあり、こうなると株全体が枯死症状を示すことになります。枯死しない病葉でも、降雨が多いと葉の内側に白い綿毛状の菌糸(カビ)がまん延しています。さらに症状が進むと、病斑の表面に直径が2~3㎜の黒いゴマ粒状のものが付着するようになります。これは菌核と呼ばれるもので、葉にしっかりくっついており、はがれません。
▲タマネギの葉に生じた病斑 |
▲株全体に広がった枯死症状 |
《 伝染経路と発病条件 》
カビが病原菌です。葉の上にできた菌核が伝染源であり、これが土中に落ちて、春秋に地表に「キノコ」を生じます。このキノコは、正しくは「子のう盤(シノウバン)」と呼ばれ、この傘(かさ)の部分に胞子をつくります。ここから胞子が飛んで病気が拡がります。つまり、この胞子によって病気が、感染・まん延して行くのです。
菌核からキノコが芽を出して胞子をつくるには、14℃前後の低温と水分が必要となります。つまりこの病気の発病条件としては、低温と降雨が望ましいのです。
この菌は、タマネギの葉を侵す能力は強いのですが、りん片(球の部分)を侵す力は微弱です。
▲葉に付着した菌核 |
▲菌核が土中に落ちて生じたキノコ |
《 伝染源のこと 》
今回は、キーワードとして、伝染源としての菌核を取り上げてみましょう。
菌核は、病原菌の立場からいえば、土の中で生き残る大切な“姿”です。一種の「耐久体;タイキュウタイ」といわれます。菌核にはキノコを作らない種類もあります。その写真を一枚載せておきます。ジャガイモの表面にしがみついている菌核です。この病気のことは次回ご紹介します。
▲ジャガイモの表面にしがみついている菌核 |