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植物の病気の話

第9話 キュウリの黒星病

作物には「持病」があります。キュウリでは黒星病がそれにあたります。

持病、つまりもっとも罹りやすい病気なのですが、それほど頻繁に目にするものではありません。農家はこの病気を丁寧に防除しているからです。でも手抜きをすると大発生して、大きな被害をもたらします。

<病 徴>

キュウリの苗はハウスで作りますが、その苗の時代から始めます。

ポツンと小さな褐色の斑点ができます。それから、その周りに脱色したリングができ、斑点はだんだん大きくなります。リングはハロー(halo;後述)といい、植物の病気でよく出てくる大切な症状です。キュウリが大きくなるにしたがって、茎や果実にも症状が出てきます。茎に盛り上がったカビが付いているのは病原菌です。果実つまり食用部分ですが、ここに症状が現れるのがもっと困ります。商品価値を失ってしまうからです。ヤニが吹き出し、最後に黒っぽいカビがつきます。

▲キュウリの黒星病(葉の症状、苗)

▲キュウリの黒星病(茎の症状、胞子の塊)

▲キュウリの黒星病(果実の症状、「ヤニ」に注目)

<病原菌と病名>

クラドスポリウム・ククメリナム(Cladosporium cucumerinum)というカビが病原菌です。クラドスポリウムは、黒っぽいカビのグループを指し、ククメリナムは「瓜類」です。とすると-。賢明な読者はもうお気づきでしょう。このカビは、ほかのウリ類でも病気を起こします。メロン黒星病、カボチャ黒星病などがあるのです。 ちなみにメロンは北海道で初めて、カボチャは日本で初めて、児玉が発見・報告しました。病斑上に盛り上がったカビは、病原菌の胞子です。米粒状の胞子がびっしり詰まっています。この胞子の形は、クラドスポリウムの特徴ですので、記憶しておいてください。

▲病原菌の胞子

▲メロンの黒星病(葉の症状)

▲カボチャの黒星病(果実の症状)

▲粋培養中の病原菌

<防除法など>

種子も保菌していることがあるので種子消毒が必要です。茎葉や果実の防除には、早めの薬剤散布が大切です。病原菌が植物体に付着しても、体内に侵入できないように防護膜を張るのです。カビの繁殖は高温・多湿と思われていますが、比較的低温を好みます。北海道では発生しやすい病気なのです。

<ハローについて>

ハローは植物の病徴(⇒第1話)の代表例です。インゲンマメにはそのものズバリの病気があります。英名は halo blight 。haloは太陽に周りや目の周りにできるカサやクマ(暈)のことです。日本語の病名はかさ枯病。昔は「暈枯病」と書きました。カビより一回り小さい微生物、バクテリアが起こす病気です。次回はその話をすることにしましょう。

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