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植物の病気の話

第27話 さまざまな灰色かび病 〜(1)豆類の灰色かび病

 はじめから病原菌の名前で恐縮です。Botrytis cinerea(ボトリチス・シネレア)というカビによっておきる植物の病気には、ほぼ例外なく「灰色かび病」と名前がついています。実にたくさんの作物がこの病気に罹ります。
 今回は豆類の灰色かび病です。畑作物の豆類のうちでは、インゲンマメで最も発生が目立ちます。

《 病徴 》

 主に葉、莢に発生しますが、病斑が拡大することもあります(写真①)。病原菌の分生子(カビの胞子)は、花弁(カベン:花びら)から侵入します。
 まず花弁の侵入部分に、先端がやや尖った楕円形の斑点が生じ、この斑点の回りは濃い綠色になり、ついには花弁全体が褐色となり、やがて灰色のカビを生じて腐敗・落下します。莢では、最初に花弁の付着部に暗緑色水浸状の病斑を生じ、急速に拡大して腐敗し、その表面に灰色のカビが密生します。また、散った花弁が葉に付着した場合、花弁で増殖した菌が葉に侵入し、多くの場合、輪紋状の褐色病斑が見られます(写真②)。

▲①インゲンマメ灰色かび病:葉の症状

▲②アズキ灰色かび病:葉の症状

《 伝染経路など 》

 病原菌は、罹病した作物の被害組織内(=枯れて死んでしまった植物体内)で、菌糸、菌核の状態で越年します。翌年、カビにとって条件が整うと(つまり温度・水分条件などが良くなると)分生子をつくり、それが飛散して開花後の老衰した花弁に感染し、そこから莢、茎葉に拡がっていきます。
 開花期以降、降雨の多い低温湿潤天候が続くと、多量の分生子を形成・飛散するため多発します。また、風通しの悪い過繁茂状態になると発病が促進されます。
 病原菌は冒頭に述べたように、Botrytis cinerea(ボトリチス・シネレア)というカビです。インゲンマメ、アズキ、ダイズのほか、ほとんどの豆類がこの病害に侵されます。このカビは菌核をつくりますが、キノコはつくりません。菌核から直接カビが伸び始めます。菌糸発芽、といいます。

《 防除のポイント 》

 被害茎葉は処分し、圃場の排水を促進し、過繁茂を避けるため施肥量に注意しましょう。発病好適条件である降雨の多い低温湿潤天候では、開花1週間後に1回目の農薬(殺菌剤)を茎葉に散布し、その後7~10日おきに計3回散布すると菌核病も同時に防除できます。つまり、灰色かび病を適切に防除すれば、菌核病も防除できるということです。

《 菌核病と灰色かび病:類似点・相違点 》

 この病気は、前回(第25話)の菌核病との類似点が多いので整理しておきましょう。

●茎、葉柄の症状
大形斑点、斑紋(=まだら模様)を生じ、ときに茎を取り巻く
写真③:白色綿状のカビが生じる⇒菌核病
写真④:灰褐色のカビが生じる⇒灰色かび病

▲③純粋培養:菌核病菌

▲④純粋培養:灰色かび病菌

●莢の症状
莢の先端から腐敗する
写真⑤:水浸状に軟腐、白色綿状のカビを生じる⇒菌核病
写真⑥:水浸状に軟腐、灰褐色のカビを生じる⇒灰色かび病

▲⑤アズキ灰色かび病:莢の症状

▲④インゲンマメ灰色かび病:莢の症状

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